ある表現行為が名誉毀損に該当するとして、損害賠償責任が肯定され、又は刑事罰が科される場合、その表現行為をする自由(表現の自由)が制約されることになる。名誉毀損が成立する範囲を広く認めるならば、犯罪や不祥事など社会に対して大きな被害をもたらしかねない不正行為についての報道や内部告発までもが名誉毀損とされてしまう可能性がある。そうなれば、名誉毀損を認めることによって被害者(国民)を保護するつもりが、思想の自由市場の機能を低下させ、あるいは国民の知る権利を害する結果を招き、結局、国民に不利益が生じることとなってしまう。そこで、名誉毀損の成立する範囲を適切に制限するための理論が模索されてきた。以下、その一例を示す。
アメリカ合衆国連邦最高裁判所の判例においては、現実的悪意の法理が採用されている。つまり、公人に言及する表現行為は、現実的悪意をもってなされた場合でなければ、名誉毀損にはならない、とする考え方である。
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現実的悪意の法理を採用した場合、公人に関する表現行為について名誉毀損が成立する範囲は狭くなる。長谷部恭男は、このような法理が認められた背景に、巨額の損害賠償が認められることによる表現行為への萎縮効果を抑制する必要性があることを示唆している。
ドイツにおいては、調査義務を尽くしたものの、誤った主張が行われてしまった場合、それが正当な利益を擁護するためになされたものであるならば、不法行為とはならないとされている(ドイツ民法)。